▶ Q01. 法人税について
▶ Q02. 申告書の作成について
▶ Q03. 決算申告の必要書類
▶ Q04. 法人府民税、事業税の仕訳
▶ Q05. 法人税とその調整額
▶ Q06. 累計赤字がある場合
A ご質問の文面から、「どこに申告するのか?」ということと「税金の金額は変わるのか?」という2つのご質問が入っていると判断しましたので、地方税を含めて、その両方についてお答えしますね。
まず、1つ目の「どこに申告するのか」という件ですが、本店の実態によって、取扱が若干異なります。まずは、基本的な取扱からご説明しますね。
法人に関する税金は、大きく次の3つの種類になります。
上記1.の国税は、日本の国は1つですので本店所在地に申告すれば良いのですが、2.および3.の地方税は、複数の事務所等があれば、それぞれの地方団体に申告する必要があります。(この場合の法人を分割法人といいます。)
実務的には、「事務所・事業所」の判定をすることになりますので、税務上の定義を書いておきますね。
「事務所または事業所とは、それが自己の所有に属するかどうかを問わず、事業の必要性からもうけられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われているものをいう。」つまり、場所があって人がいて、そこで営業しているところが「事務所・事業所」ということになります。
「本店を自宅とし、」とありますが、この本店が登記上のみの本店であって、通常はここに常駐の従業員等がおらず、営業を行っていないのであれば、「事務所・事業所」に該当しないことになります。この場合には、法人税は「本店所在地」に、地方税は「別の市に開設した事務所の所在地」に申告・納税をすればよいことになります。
つまり「分割法人」には該当しません。これは、ちょっとおかしな取扱ですが、法人税は「納税地」を「本店所在地」としているためで、これが実態にあわないと認められる(国が)ときには、国税局長が納税地を指定することがありますが、原則として登記をした本店が納税地となるため、地方団体の取扱(申告場所)と異なることになってしまいます。
また、「本店である自宅」が前述の取扱で、「事務所・事業所」となるのであれば、「分割法人」となり、地方税の申告は、その「事務所・事業所」の所在地の市町村または道府県ごとに申告することになります。
例えば、本店が堺市(事務所等に該当しない)で、事務所が大阪市の場合、法人税は堺税務署、府民税等は大阪府、市民税は大阪市へ提出することになります。また、本店が堺市(事務所等に該当する)で、事務所が大阪市にある場合、法人税は堺税務署、府民税等は大阪府、市民税は堺市と大阪市の両方に提出する事になります。
次に2つ目の、「税金の金額は変わるのか?」という件ですが、会社が「分割法人」に該当する場合に影響がでます。分割法人の場合には、会社全体の地方税を関係する各地方団体に按分するという作業を行います。ですから、納める「所得にかかる地方税」自体の合計金額は変わらないのですが、「均等割」という税金が事務所のある地方団体ごとに加算されます。
上記の例で言いますと本店が事務所等に該当する場合には、本店以外の「大阪市」(道府県も違うのであれば、「道府県」分も)に対して「均等割」分の税金が増えることになります。ちなみに税額は資本金1,000万円以下の法人の場合、年間5万円(道府県も違うのであれば、道府県分は年間2万円)が標準です。
少し、長くなってしまいましたが、まとめますと、実態のある事務所等ごとに申告納税する必要があり、その申告する場所が増えれば、その分「均等割額」が増えるということになります。
A 申告書の作成の順序ということですが、まずは、税務上の「申告書」の役割を説明しますと、これは、会社の「決算書の利益」を税務上の「所得(利益)」に調整するために作成することになります。
例えば、「交際費」は、会社の決算上は「経費」に全額入りますが、税務上は制限があります。この差は決算書を修正するのではなく、申告書(別表4)を調整(加算)することによって、「決算書」と「申告書」の整合をとることになっています。
以下、少し複雑な処理ですが、簡単に申告書の作成順序をご説明しますね。
これで、完成!です。
それぞれの書類の作成は、会社の内容によって、当然変わってきますし、文章でご説明するにはあまりにも複雑になりますので、ご容赦ください。
税務署・府税事務所・区役所から送られた書類の中には、それぞれの書類の作成方法が詳しくかかれていまして、ご参考になると思いますが、自社で作成することが困難だと思われた時には、お早めに税理士等の専門家に依頼されることをお勧めします。
もう一つのご質問ですが、法人の所得が赤字になってしまった場合、当然「法人税」はかかりません。法人府民税と法人市民税の「均等割」の税金だけになると思います。(法人税の申告はいずれにしても必要ですよ。)
この場合の赤字の金額(繰越欠損金)は、7年間繰り越すことができますので、翌年以降に所得が出てきた場合にその所得金額から控除できます。
決算内容等がわかりませんので、具体的なアドバイスはできませんが、法人は、利益を出して、税金を納めていかないと永続的に生き残ることができません。ず~と、赤字でしたら、つぶれてしまいますものね。せっかくの決算期ですので、決算の内容を分析して、翌年度の「計画」を作成されたらいかがでしょうか?
A まず、別表の入手方法ですが、税務署に「開業届」を提出していれば、送られてくるはずなのですが(申告書を提出する月の月初くらいに)、設立から決算まであまり期間がない場合には、税務署の事務処理が間に合わないかもしれませんね。
そんな時は、税務署で用紙をもらうか、国税局のホームページでダウンロードできますよ。
また、必要な別表は、その法人によって異なってきますが、基本となるのは、下記の別表です。
■ 別表1(1) 税額を計算する
■ 別表2 株主の判定をする
■ 別表3 所得の計算をする
■ 別表5(1) 利益・資本積立金額の計算をする
■ 別表5(2) 租税公課の納付状況の明細書を作る
■ 別表6(1) 源泉所得税の控除の計算書
■ 別表6(1) 付表繰越所得税額の計算をする
■ 別表7 繰越欠損金の計算書
■ 別表15 交際費の計算書
■ 別表16・17 関係減価償却費の計算をする
その他、その法人の活動状況によって、別表を追加する必要があります。
実は、これが法人税(国税)の申告書関係ですが、まだ、都道府県民税と市民税(地方税)の申告書も必要です。これらを文書で、ご説明することは、ちょっと、不可能ですので省略させて頂きます。
作成の仕方は、それぞれの用紙の裏面に書かれていますので、ご参考になると思いますが、なにぶん紙面の都合上、最低限のことしか書かれていません。
書籍の「法人税申告書の実務」とかのタイトルで、いろいろ出版されていますので、こちらの方が、流れが理解できて、良いと思います。
一度、いろいろな別表をダウンロードして頂いて、見てみて下さい。
(地方税の申告書は、直接、管轄の役所に行って下さいね。)
A 「予定納税」に関することですね。法人の所得に対する税金の会計処理には、いくつかの方法がありますが、私が実務で行っている方法でご説明します。
まず、予定納税した金額は、損益計算書の「法人税・住民税及び事業税」という勘定科目(損益計算書「税引き前当期利益」の次の科目)で処理します。預金利息等で源泉徴収された所得税・利子割の税金も同じ勘定科目で処理をしておきます。
仕訳にしますと、下記のような感じです。
(1)予定納付した場合
法人税・住民税及び事業税/普通預金¥○○○○中間法人税
法人税・住民税及び事業税/普通預金¥○○○○中間府民税
法人税・住民税及び事業税/普通預金¥○○○○中間市民税
法人税・住民税及び事業税/普通預金¥○○○○中間事業税
(2)預金利息があった場合
普通預金/受取利息¥○○○普通預金利息
法人税・住民税及び事業税/受取利息¥○○○普通預金利息所得税
法人税・住民税及び事業税/受取利息¥○○○普通預金利息利子割
これらの税金は、あくまで「当期の利益に対する税金の概算前払い」と考えます。ちなみに、預金利息等の「所得税」は法人税の、「利子割」は府民税のそれぞれ前払いと考えます。そして、決算が仮確定しましたら、法人税・住民税・事業税の年税額を計算します。
その計算された法人税等から上記(1)の予定納税額と(2)の利息等にかかる税金を差し引きまして、確定申告の時に納付する税額を計算することになります。
その金額を
■ 法人税・住民税及び事業税/未払法人税等¥○○○○未払確定法人税
■ 法人税・住民税及び事業税/未払法人税等¥○○○○未払確定府民税
■ 法人税・住民税及び事業税/未払法人税等¥○○○○未払確定市民税
■ 法人税・住民税及び事業税/未払法人税等¥○○○○未払確定事業税
という仕訳で、未払計上(当期)しておき、納付したとき(翌期)に未払法人税等を消します。この未払法人税等の仕訳を計上しまして、決算確定ということになります。
確定した決算書の「法人税・住民税及び事業税」の金額は、予定納税時・利息源泉時・確定決算時にそれぞれ計上した合計額となり、年間の法人税等の金額に一致することになります。
A 「税効果会計」といわれるご質問ですね。その前に、「決算書の利益金額」と「税務申告書の所得金額」の違いを簡単にご説明し、その後、「調整額」について、簡単にご説明しますね。
では、「決算書の利益金額」ですが、簡単な事例を作ります。
このような会社の場合、「税務申告書の所得金額」は、次のようになります。
となり、この80万円に対して、法人税等が計算されます。
(仮に50%の税率で、40万円とします。)
この会社の調整後の決算書は、次のようになります。
ここまでが、通常の計算です。
ご質問の「税効果会計」はここからなのですが。
まず、「決算書の税引前利益(50万円)」と「税務申告書の所得金額(80万円)」の違いを分析しますと、次の2つですよね。
このうち、1番は、減価償却費の性格上、いずれ解消される差額→「一時的な差異」となります。
50万円の車を5年で償却するとしたら、1年目に50万円償却して、残りの4年間は償却費ナシでも5年間のトータル50万円の償却。5年間で均等に10万円ずつ償却しても5年、年間でトータル50万円の償却です。
ですから、その差額は5年間で見たら「0(ゼロ)」となり、いつか解消されると言うことになります。
それに比べまして、2番は、「会計」と「税法」の根本的な取扱の違いから、「決算書で経費にしていても税法上は経費にしないよ」という取扱ですから、いったん出た差額は、永遠に「税務上の経費」になることはありません。
このことから2番は、→「永久差異」といわれます。
ご質問の「調整額」は、1番の「一時差異」に関係しています。
「一時差異」は、いつかは、法人税法上も「経費」にしてくれますので、それまでは、税金も「前払い」しているだけと考えます。
上述の「例示」では、「減価償却限度超過額の10万円」に対する5万円(10万円×50%)が、前払いの税金として「調整額」となります。
これを決算書(これで本当の最終の決算書)に表示しますと、次のようになります。
上記の5万円の前払いの税金は、「減価償却限度超過の10万円が解消」された時「調整」されて、表示されることになります。
「税効果会計」の目的を私なりに解釈しますと、「会計」と「税務」の考え方の違いを「税金の表示の仕方で調整し」、「当期で負担すべき税金」を理論的に正しく表示する。ということだと思います。
誤解のないように補足しますと、税効果会計を採用しても、実際に払う「税金の額」は変わりません。実際に払う税金には、「将来の負担とすべき税金も含まれているよ。」と決算書で表示しておくと言う意味があるだけです。
(一時的に「配当できる金額」=「税引後利益」が増えると言うことにもなりますが。)
A 法人の場合、青色申告書を提出している決算期の「赤字(欠損金)」は、7年間繰り越しできますので、繰越欠損金のある状態では、法人税等はかかりません。
要件としましては、下記3点です。
例えば、会社が
1期目 -300万円 青色欠損
2期目 -200万円 青色欠損
3期目 -250万円 青色欠損
4期目 -150万円 青色欠損
5期目 +500万円 所得
のような場合、1期目と2期目の「欠損金の合計500万円」を5期目に控除することになります。3期目の欠損金は、第10期目まで、4期目の欠損金は第11期目まで繰り越すことが出来ます。(1年決算で決算期の変更がない場合)
ただし、法人の「決算書の利益金額」と「申告書の所得金額」とには、通常若干のずれがあります。
申告書で控除できる「欠損金」は、「申告書の別表一の(一)(青色の紙のやつです)」の27番の欄に記載されていますので,ご確認ください。